手続中・手続後の債権者対応

文責:弁護士 鳥光 翼

最終更新日:2023年04月26日

1 被相続人にお金を貸した相手から連絡が来た場合

 被相続人が借金等をしていた場合、貸金業者や債権回収業者、その代理人から、書面・電話等で連絡が入ることがあります。

 このような場合、コンタクトをとるのは怖いと思います。

 電話に出ない、書面に返信しない、というのも手ではありますが、完全に無反応を決め込みますと裁判を起こされる可能性もあります。

 そこで、相続放棄の手続中である旨、ご一報だけすることが得策です。

 その際、他のことは一切伝えなくて大丈夫です。

 相続放棄の代理をする弁護士から一報してもらうのも手です。

2 被相続人が賃貸物件に住んでいた場合の賃貸人からの連絡

 これはとてもよくあるケースである反面、非常に微妙な問題がたくさんあり、慎重な対応が必要です。

 まず、賃貸借契約そのものにつきましては、解約はせず、賃貸人側から一方的に解除してもらう必要があります。

 さらに、もっとも悩ましい問題が、被相続人の残置物です。

 残置物とは、被相続人が家に置いていた家財道具や衣類等です。

 法的な観点だけでいえば、相続放棄を進めている相続人は何もしなくてもよいです。

 相続放棄完了後は、初めから相続人でなかったことになりますので、賃貸人とは全く無関係な立場になります。

 賃貸人は、相続財産管理人の選任を申立て、残置物の処分を行うことになります。

 しかし、現実的には、良心の呵責もあり、賃貸人からの連絡を完全に無視し切れない場合も少なくありません。

 そこで、財産的価値のない物(=いわゆるゴミなど、売却しても値段がつかない、あるいは処分費がかかるもの)は相続財産ではないと解釈し、処分してもよいと考える実務傾向もあります。

 ただし、裁判所はこれを明確に認めてはいません。

 裁判所は、あくまでも形見分け程度の財産処分については法定単純承認事由に該当する行為としない旨を示していますが、残置物全般については明確に判断していません。

 そのため、残置物処分については、とても慎重に判断する必要があります。

3 被相続人の保証人になっていた場合

 相続人が被相続人の保証人となっていた場合で、保証人としての支払いを求められた場合は、支払っても法定単純承認事由に該当する行為とはなりません。

 例としては、被相続人の未払家賃や、入院費などがあります。

 これは、あくまでも債権者と相続人の間の保証契約に基づく、相続人固有の債務なので、相続財産ではないことが理由となります。

 支払う場合は、後々のトラブルを防ぐため、領収書等に保証債務の履行として支払った旨を記載してもらうとよいです。

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